韓国の美容外科事情



■整形手術は隠さない

ソウルで開かれた同窓会で、昔よく遊んだ友達と久しぶりに会ったところ、夏休みにみんなでスペインへ旅行しようという話が出て、地理学者の私が先頭に立って企画を進めた。
しかし、なかなか人数が集まらなくて、話はなくなってしまった。

ソウル市内で美容外科医をしている仲のいい友達に声をかけた時、彼は、「夏休みと冬休みは無理だよ。春か秋に行くのならのるけど」と断ってきた。
「休み中なのに、そんなに患者さんがいるわけ?」と聞いたら、年間の患者数の3分の2は夏休みと冬休みに集中するらしい。
だから、美容外科をやる以上、夏と冬には休めないようだ。

注)日本でも、春休み、夏休み、冬休みには手術が集中します。

日本人から「韓国と言えば整形の国というイメージがあるけど、本当にそうなの?」とよく聞かれるが、本当にそうだ。
冬休みには高校3年生が大学入学の祝いとして、親から「まぶたを二重にするプチ整形」「鼻整形」「アゴを削る整形」といったプレゼントをもらうことも少なくない。
大学に入ってから手術したら友達にわかってしまうから、わからないうちに手術しようという発想だ。
私の周りでも、何人かの教え子と姉の友達が高校卒業前の冬休みに整形手術をした。
もちろん、女子大生になってから整形する人も多く、夏休みと冬休みに予約が取れない病院も少なくない。

韓国に留学したアイコという後輩の話だ。
彼女は普段から仲よくしていた同じ大学の韓国の友人に誘われ、家に遊びに行った。
ご飯を食べて、デザートでスイカを食べていたら、友達の親にジッと見つめられた後にかけられた一言に、びっくりしてしまった。「アイコ。あなた。その顔じゃお嫁にいけないわよ。私がよく知っている美容外科の先生がいるから、今度一緒に行きましょう?」

いくら親友の親とはいえ、アイコはその言葉に落ち込んで、しばらく立ち直れなかった。
私はアイコに「友達の親は決して悪気で言ったのではない。アイコに本当にきれいになってほしいから言ったんじゃない?」と慰めたが、彼女はひたすら、「ひどいわ」という言葉を連発するだけだった。
韓国人なら、友達の親にそのように言われて落ち込む人は少ないだろう。
それよりも、「その美容外科はどこにありますか? 実は鼻をちょっと直そうと思っているのですが」とウマが合って、整形の話で盛り上がっただろう。

日本でも美容外科は少なくないが、患者さんの行動をみると、韓国のそれとは事情が違う。
日本では、整形専門医の腕の善し悪しに関して噂が立たないが、

注)最近は日本でも「2ちゃんねる」などの掲示板でウワサ話がひどいです。

韓国では一気に噂が立って広まる。
日本人は整形したことを隠す人が多いが、韓国人は隠さない。
韓国人は、整形して恥ずかしいとか後ろめたいと思う人は少ないからだ。
「自然なブスよりも整形美人を好む」という調査結果もあるぐらいだ。
それは、「整形したというプロセスは努力」として認められ、「きれいになったという成果」も重視するからかもしれない。

テレビ番組のトークショーに出演する韓国人の女優は、自分が整形したことを告白したり、公式の場で話題にしたりする場合が少なくない。
整形を隠した芸能人はインターネットのブログで「ウソつき」と批判されたり、ファンに嫌われたりさえする。
だから芸能人の中では、最初から「鼻と目は整形です」と胸を張って堂々としている人もいる。
また美容外科の病院は、「うちの病院では、芸能人の××が手術を受けました」という見出しを雑誌の広告に載せるケースだってあるのだ。

このように、整形手術した事実を隠さず、みんなで情報を共有するから、「××病院の××先生はダメよ。このあいだ手術した○○の顔をメチャクチャにしたじゃない」「△△先生は日本人も来るぐらい腕がいいらしいわ。今度一緒に行きましょう」などと、整形の専門医の評判が噂され、繁盛したりつぶれたりする。
インターネットでは「整形クラブ」があるほど国民的関心が高い。

大学2年の夏休み明けの初めての授業。
一人の学生が教室へ入った瞬間、クラスメートのみんなの口から、「ワーッ!」という歓声と拍手の音が教室中に響き渡った。
「すごくきれいになったね」「鼻がすごくきれいになったわ」「どこでやったの?」「いくらかかったの?」「うらやましいわ。私にも紹介してよ」などと、一人の整形美人を巡って、みんなが集まって盛り上がった。
男子学生も昼飯の時まで彼女を話題にして、「本当にきれいになったよな」とほめていた。
彼女に後ろ指を指す人は誰もいなかった。

ところが、整形が繁盛している韓国でも、胸を大きくする手術だけは少ないようだ。
豊満な胸はセクシーというイメージよりも、バカっぽい女に見えるという印象が強いからだ。

注)豊胸手術が盛んなのは、アメリカと日本です。

「韓国人を愛せますか?」 朴宗玄 著 より