美容外科の経営戦略


美容外科業界の構造分析法

競争を激化させる構造要因


T 新規参入の脅威
U 既存競争業者の間の敵対関係の強さ
V 代替製品からの圧力
W 買い手の交渉力
X 売り手の交渉力



T 新規参入の脅威


今、美容外科では新規に開業するクリニックが非常に増えています。

第1のグループとしては、大手美容外科チェーンに勤務していた医師が次々と独立開業しています。
これは、「何でも自分で自由にやりたい」「成功すれば儲かる」というのが主な理由でしょう。
大手美容外科の勤務医は、結局、サラリーマンですから、何かと制約が多く、給料も決まっています。

第2のグループとしては、大学病院の形成外科に勤務していた医師が次々と独立開業しています。
これは「このまま大学の医局にいても出世の見込みがない」というのが主な理由でしょう。
なぜなら、形成外科の教授のポストは完全に飽和しているからです。
しかし、形成外科単独では経営が成り立たないので、結局、美容外科の診療を行うことになります。

いずれにしろ、美容外科は参入障壁が低い診療科目といえます。


U 既存競争業者の間の敵対関係の強さ


成功している美容外科は、全国チェーン化を目指す場合が多いです。
なぜなら、美容外科のようなビジネスは1店舗あたりの売上が頭打ちになりやすいからです。
売上を2倍、3倍にしようと思うなら、店の数を2倍、3倍に増やすのが一番簡単です。
これは、外食チェーンやコンビニと同じ発想です。
どんどん店を増やしていくと、同じようなことをやっているようでも儲かる店と儲からない店がはっきりとしてきます。
儲からない店は結局、場所が悪い場合が多いので、これはもうあきらめてつぶしてしまって、また新しい店を作ります。
これを「スクラップ・アンド・ビルド」といいます。

また、店の数が増えると、特に広告費の面で「規模のメリット」「スケール・メリット」があります。
例えば、ある全国紙に広告を出すために月に500万円かかるとします。
たった1店でこれを払うのは大変なことです。
しかし、全国に支店が5あれば、1支店あたりは100万円ですみます。
支店が10あれば、1支店あたりは50万円ですみます。
つまり、支店が多いほど1支店あたりの広告費の負担は少なくなるので、広告費の費用対効果が良くなるわけです。

こうして、成功しているクリニックは、どんどん支店を増やしていきます。


V 代替製品からの圧力


最近、美容皮膚科クリニックが急増しています。
こちらは、もともと大学病院の皮膚科に勤務していた医師が独立して開業する例が多いです。
比較的に若い女性医師が多いのも特徴です。
現在、美容外科と美容皮膚科は、メスを使用しない治療において、ほとんどオーバーラップしています。
具体的には、レーザー脱毛、フォトフェイシャル、ポラリス、サーマクール、、シミのレーザー治療、ケミカルピーリング、イオン導入、ヒアルロン酸注射、ボトックス注射、プラセンタ注射などがあります。

美容外科のライバルとしては、エステティックサロンがあります。
脱毛などはエステで治療を受ける人も多いです。
また、リラクゼーション、マッサージなどは、一般的に、エステのほうが人気があります。


W 買い手の交渉力


最近は、価格を熱心に調べて比較する患者さまが増えています。
実際に数件のカウンセリングを受けて、見積をとって比較するような賢い患者さまも増えています。
また、いわゆる「値切り」「値引き交渉」も実際には行われています。
美容外科は自由診療ですから、結局、最後は交渉しだいなのです。


X 売り手の交渉力


フォトフェイシャル、レーザーなどの高額な医療機器は、特定のメーカーが独占価格を設定しています。
多少の値引きはありますが、価格の決定権はそのメーカーや輸入代理店にあります。

ヒアルロン酸のレスチレン、パーレーンなどは、ある輸入代理店が独占していて価格が統一されています。

ボトックスは非常に高価ですが、これはアメリカのアラガン社が独占的なメーカーで、価格を設定しているからです。


競争の基本戦略

三つの基本戦略


1 コストのリーダーシップ
2 差別化
3 集中



1 コストのリーダーシップ


ビジネスの戦略として、いわゆる安売り、低価格戦略は非常にわかりやすいものです。
しかし、美容外科の場合、安売りはあまり成功しません。

理由1
あまりに安いと「安かろう、悪かろう」ではないかと、患者さまに疑われてしまいます。
低レベルに見えて、不安に思うようです。

理由2
低価格戦略であろうとも、広告費、人件費、設備投資、消耗品費などは、それなりにかかるものです。
結局、営業利益が少なくなってしまいます。

理由3
成長曲線効果が少ない。
製造業では累積生産数が2倍になると製造コストが20〜30%低くなるといわれています。
簡単に言えば、「たくさん作るほど、安く作れるようになる」ということです。
ところが、手作業によるサービス業は、このような効果は少ないのです。


2 差別化


●広告による差別化

広告上手なところに患者さまが集まるのは、言うまでもありません。
高度な技術、独自の技術をPRしながら、高級感を上手に演出します。

●場所・設備による差別化

銀座、渋谷といったイメージのよい場所にクリニックがあると、それだけで高級感があります。
駅前の一等地のキレイなビルに、広い面積を借りて、内装にお金をかければ、豪華なクリニックに見えます。
自社ビルで入院施設などが整っていれば、さらによいでしょう。
最新のレーザー、フォトフェイシャル、オーロラ、サーマクール、ポラリスなど、高価な医療機器をずらりとそろえれば、ハイレベルなクリニックに見えます。

●医師、スタッフによる差別化

医師は、有名大学卒、医学博士、形成外科認定医、美容外科専門医といった肩書があるほうが有利です。

年令的には、30〜40代くらいが有利です。
あまり若くても高齢でも、患者さまは不安になります。

男性医師は、ハンサムで貫禄があるタイプのほうが有利です。

女性医師は、美人でスタイルがよくてオシャレなタイプのほうが有利です。
また、女性医師は、皮膚科とオーバーラップする領域、婦人科とオーバーラップする領域で有利です。

カウンセラーや看護師などのスタッフは、なるべく若くて美人でスタイルがよい女性をそろえて、礼儀正しい接客ができるようにしっかりと教育します。


3 集中

専門分野をはっきりさせたほうが、その分野では有利です。

・豊胸専門
・脂肪吸引専門
・ワキガ専門
・二重まぶた専門
・植毛・育毛専門
・レーザー専門


※参考文献 「競争の戦略」 マイケル・ポーター著 ダイヤモンド社